本研究では、温室効果ガスの排出量の抑制や道路混雑緩和などを目的として導入される軌道系公共輸送機関の料金政策と財源制度について、伝統的な次善料金形成理論に沿って既存研究を拡張し、工学的な交通ネットワーク分析と経済的な交通経済システム分析を複合的に組み合わせた理論的な分析を平成11年度に行った。 本年度前半では、軌道系公共輸送機関の導入目的に即した費用負担制度の整理及び公共輸送機関の料金制度の整理と交通システムに対する影響を検討した。そこでは、既存の公共交通システムの強化を目的とした軌道系公共輸送機関の整備目的とその目的に見合った費用負担の考え方を整理し、既存交通整備制度と諸外国の交通整備制度を比較し、我が国の現行制度の問題点を整理した。また、費用負担制度の変更によって都市交通システムに生じる影響を検討し、最終的に自動車利用者の費用負担を考慮した都市鉄道整備に対する費用負担問題を数理最適化問題として定式化した。 本年度後半では、MPECに基づく小規模交通ネットワークモデルを用いた政策分析を試みた。小規模な都市交通システムを表すネットワークモデルに対して、本研究で構築したモデルを適用し、交通機関別・主体別の厚生分析を基礎とする費用便益の観点から交通政策の影響を分析した。また、今年度末には、次年度の実証研究に備えて地理情報システムを導入した。 なお、これらの理論的分析の結果の一部を取り纏め、ギリシャで開催されたUrban Transport and Environment for the 21st centuryで研究発表した。
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