| 研究概要 |
地震時の被害波及防止は,未然防止や早期復旧とならんで重要な地震防災対策の構成要素である.特に,空間的な広がりを持つシステムにおいては,被害の局限化と波及防止のため,連続的な構造物群をブロック分割するリアルタイム対応が有効である.本研究はこの課題を「大規模システムの最適ブロック分割問題」と「緊急対応の意思決定問題」という2つの数理的問題として定式化し,それぞれの解法を提案するものである.
最初に,単純な線状構造物の一次元分割問題を考え,被害波及を最小化するための最適分割問題を定式化した.その解法として動的計画法を応用した手法とGA(遺伝的アルゴリズム)を応用して手法を提案し,数値計算によって最適分割形状に関与する要因について考察した.さらに,やや複雑な形状の線状構造物についても上記の手法を適用できるように拡張し,阪神・淡路大震災における阪神水道企業団の送配水管網のブロック分割を対象としたケーススタディーを実施した.
次に,緊急対応の迅速化・正確化・合理化を支援するため,地震時リアルタイム対応に関する意思決定プロセスの数理モデルを構築した.その一つは,地震動強度情報の入手に基づく緊急対応の意思決定プロセスである.得られた地震動強度を即座に行動に結びつけるために,ベイズ決定方式による期待被害最小化の行動戦略を定式化し,その妥当性を検証した.もう一つは,地震動強度情報による被害推定を,実被害情報の入手に応じて逐次更新し,被害の全体像を先行予測する意思決定プロセスである.ベイズ確率の方法を応用し,被害率(または被害確率)の確率分布を支配する母数を推定するとともに,被害の全数を逐次予測し,緊急対応の意思決定の判断材料とするものである.このモデルに基づき,逐次確率比検定を用いて,迅速性と推定精度のバランスを考慮した緊急時の意思決定支援モデルの基礎を構築した.
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