この研究の第1の目標は、レーザーとプラズマを利用した高エネルギー電子加速器の実現に向けて問題の1つとなっている加速距離制限を克服するプラズマ導波(plasma waveguide)の形成機構を解明することである。今年度はプラズマ密度計測用のマイクロ波干渉システムの組立、調製を行った。密度計測に用いるマイクロ波周波数は24GHz帯を用いる。また、プラズマ導波路を延ばすために実験装置の改良を行うとともに、装置改良後、従来の測定法である探針法で基礎実験を行った。この結果、密度勾配が平坦なプラズマが生成されており、今後のプラズマ導波路の実験に適していることがわかった。今後、組み上げた干渉計測装置を用いて、プラズマ導波路の密度計測を行う。 同時に、横波とプラズマを用いた小型イオン加速器の可能性を検討してきた。その加速方法として電子加速では原理実証されているレーザー励起航跡場加速方式を用いる。電子加速では進行方向の航跡場を利用しているが、陽子(プロトン)加速では径方向の航跡場を利用する。その加速方式のシミュレーションの結果から、初期エネルギー1MeVの陽子ビームを入射すると、レーザーのスポット長の加速距離で約100keV/段のエネルギー増が得られ、加速勾配に換算すると10GeV/mとなることがわかった。しかし、このエネルギー増では高エネルギー(数MeV以上)陽子ビームに対しては不十分であるので、さらなる検討を行っている。今後、この加速方式の実験を行うにあたり、まず入射器用の陽子源を製作しなければならない。
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