研究概要 |
今年度は、本方式の独創的な点である、(1)この30年来用いられてきた、半導体空乏層内のX線生成電荷(電子温度T_e,密度n,有効電荷z_<eff>に複雑に依存)を用いる定説的手法/常套手段を覆し、(2)空乏層を「X線吸収体」として用いる新着想(従来用いられた事の無い、無電場基板領域でのT_eのみに分布形状が依存するX線生成三次元拡散電荷を用いる)の有効性検証の準備及び基礎実験を行った。 即ち、本新着想の実証のため、(3)我々の提唱した「半導体新感度理論」に基づき設計され、(4)本研究のためにSII社と共同開発してきた半導体検出器の製法特許を用いた「新開発多チャンネル半導体検出器」に対し、その単色X線の基礎特性を、高エネルギー加速器研究機構(KEK)放射光施設で得た。また、(5)本方式の実証実験に必要となる特殊形状X線コリメータを設計・製作し、以下の基礎実験を行った。先ず、計測器の空乏層厚d∝V^<1/2>(Vは外部印加電圧)をVの時間掃引により変化させ、空乏層での吸収X線を変化させた。一方、無電場領域内の深さ方向のX線生成電荷分布形状は、無電場領域でのX線減衰分布形状で決まり、X線エネルギーに依存する。このように、X線エネルギーに依り生成分布が異なる電荷が、無電場領域で三次元拡散し、X線入射の無い隣接チャンネルに拡散し、入射エネルギーに特有の拡散電荷分布を形作る事を確認した。本手法により得られる拡散電荷分布と、新感度理論を用いた計算拡散電荷分布の比較を行うことにより、電子温度の導出が可能となる。
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