研究概要 |
核融合実験装置内の高温プラズマに対して重要な影響を及ぼしている、プラズマ対向壁付近で発生する粒子放出現象(イオン反射,スパッタリング,電子放出)に関する詳細な情報を得るために、計算機シミュレーションのプログラム(基礎部分)を開発し、試験的な計算を行った。結果は講演、論文、国際会議で報告し、議論の対象となり一定の評価を得た。 1.主に、原子番号Z_1=1-17の複雑な電子殻構造を持つ多価イオンがA1(アルミニウム)を衝撃した場合について、密度汎関数法により計算したイオンの固体内電子励起断面積を用いて計算機シミュレーションを行った。各粒子放出現象を同時に模擬し、各々についての結果が全て、実験的・理論的に知られている特性(放出比,放出エネルギー分布,放出角度分布)を定量的・定性的に再現した。各粒子放出現象の類似点・相違点についても、固体内での各粒子のカスケード効果を用いて説明出来た。これを基本にプログラムを更に改良する予定である。 2.電子放出に関して、固体内電子励起断面積データを改良するため、光学モデルにより断面積の数値計算を行い、そのデータを用いて計算機シミュレーションを行った。比較のため、陽電子についても同様に行った。電子・陽電子の固体表面衝撃による反射粒子、電子放出については定性的に特性(放出比,放出エネルギー分布,放出角度分布)を再現し、その原因を弾性断面積・非弾性断面積の相違から説明出来た。両粒子衝撃による場合の類似点・相違点の原因も説明出来た。この結果を考慮して、計算方法とプログラムを改良する予定である。
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