1.トロイダルアルヴェン固有モード(TAE)の空間構造が振幅に依存せず変化しないと仮定し、その振幅及び位相と高速イオン非線形運動を自己無撞着に追跡する、いわゆる「摂動論的非線形シミュレーションコード」を開発した。 2.そのコードを用いて、TFTR(米国)における中性粒子入射実験において観測されたTAEバーストとそれに伴った高速イオン損失に関する計算機シミュレーションを実行した。物理的条件は実験に即した現実的なものとした。高速イオンは110keVに相当する、ほぼアルヴェン速度に等しい一定の速度で入射され、加熱パワーは10MWである。TAEによってプラズマ周縁に輸送された高速イオンは取り除かれる。磁気面は同心円状として、トロイダルモード数が1-3の3つのTAEを考慮した。それぞれのTAEの減衰率は常に一定で、2×10^5[s^<-1>]とした。磁場強度は磁気軸上で1[T]であり、アスペクト比3.2、安全係数は小半径の二乗に比例して変化し、中心で1.2、周縁で3.0であり、高速イオン減速時間は100[ms]とした。 3.3つのTAEが同期したバーストが一定の時間間隔1.8[ms]で発生した。これは実験値の2.2[ms]とよく一致している。高速イオン蓄積エネルギーは古典的減速分布の20%で飽和した。各バーストに伴って高速イオン蓄積エネルギーが9%減少した。これも実験における推定値である7%とよく一致している。高速イオン分布の時間発展を解析した結果、高速イオン分布がほぼ限界安定状態となり、その近傍でゆらいでいることが明らかになった。また高速イオンの損失機構について解析し、最大振幅状態では全位相空間が、重なり合った共鳴領域で埋め尽くされていることがわかった。つまり最大振幅状態では高速イオンの軌道は確率的となり、共鳴の重なり(resonance overlap)が高速イオンの大局的輸送をもたらしていることが明らかになった。
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