昨年度から試みていた30mmX50mmφのフッ化鉛の高純度結晶2個の製作に成功し、その光学特性の測定を行った。高エネルギー物理学実験では、γ線検出器を構成するチェレンコフ輻射体として使用されるので、特に実物大での光透過率が重要である。(光電子増倍管での獲得光電子数が、測定γ線のエネルギー分解能に対して支配的であるので。)複素屈折率データから表面反射効果を補正し透過率データを得た。通常の光電子増倍管の感度域400nm付近で85%、UV領域280nmでも70%と良好な結果が得られ、チェレンコフ輻射体として有望であることがわかった。 この結晶を2"φの光電子増倍管に装着し、宇宙線検出のテストを行った。垂直入射の宇宙線に対する獲得光電子数は300〜450個であり、屈折率、量子効率等と矛盾の無い結果を得ることができた。この結晶は高屈折率であるので、コバルト等のγ線源によるコンプトン散乱電子でも光を発生する。宇宙線のデータとコバルト線源によるADCデータとの間も矛盾の無い結果が得られた。 本年度経費で購入した計算機を用いて、高エネルギーγ線用結晶デザインのため、EGS4を用いて電磁シャワーのシミュレーションを行った。特に、入射エネルギーを変化させたときの結晶に対する損失エネルギーと、電子シャワーの幾何学的な広がりを重点に考察した。その計算をもとに20×20×100程度の結晶の製作を行った。次年度はこの結晶複数をγ線検出器として組み上げ、加速器施設のγ線ビームを用いて、その特性のテストを行う予定である。また、コバルト照射による、放射線損傷についても実験を行う予定である。
|