研究概要 |
想定/想定外事象時に操作員を支援するインタフェースの理論的枠組みとして提案されている生態的インタフェース設計法の有効性と問題を明確にすること,及びその改善を試みることを目的として,「人間中心の自動化」が提唱している「対象システム及び自動制御系の状態把握支援」について検討した.並行して理論的基盤を整備するために,人間機械系の適切なタスク配分に関する検討も行った.[対象システムの状態把握支援]当該設計論では,人間は対象を機能階層モデル(目的手段モデル)として把握しており,これに適した情報を提供すべきとしている.想定外事象時も含めた状態でのこの妥当性を検討すべく,「正常/異常」,「機能の状態」,「機能の想定状態」の各条件下おける情報の十分性を評価した.この結果,既存の機能を想定(表示)していないがため,あるいはシステムの物理的変化等により生成した機能を想定していないがため,有用な機能を利用できないという,これまで検討されていない新たな状況の存在を明らかにした.このような機能群の把握は重大状況における対応方法の策定において重要であり,これまでの設計法の不備を改善できたと考える.[自動制御系の状態把握支援]厳しい時間制約下では自動制御系の複雑な挙動の把握は非常に困難であることから,モードエラー(把握失敗)が生じている.そこで自動制御系の意図(制御目的と手段)に関する情報を,対象システムの目的手段モデルに基づき整理・同定する方法を新たに考案した.この情報を表示したインタフェースを利用することで,制約時間に適した抽象度表現を用いた状態把握が可能となること,全体の目標と自動系及び自身の目標との関係に対する理解が可能となること,自動系の利用手段を理解することにより自ら用いる手段との干渉を回避できることが期待できる.被験者を用いた認知実験により,これらの有効性を確認することができた.
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