研究概要 |
平成11年度では、名古屋大学現有の30KeVイオン注入装置を用いて水素・ヘリウムイオン照射を行い、その時にシリカガラスから放出される発光のその場観察を行った。この発光は、試料中の酸素欠陥種がイオン照射により電子励起される様子を主に反映していることが分かり、この発光強度の照射時間に対する変化を詳細に調べることによって、照射により生成した点欠陥が欠陥集合体へと変化してゆく動的過程を捉えることができた。 その一方で、原子炉照射下(東大・弥生炉)に置かれたシリカガラスからの発光をその場観測することにも成功し、照射時間によって急激に強度が減少する発光とゆっくり成長する2種類の発光があることを見い出した。γ線照射実験や可視〜紫外光吸収発光スペクトルの測定を併用して行うことにより、前者の発光は原子炉中のγ線による電子励起効果によって酸素欠陥種が異なる電子状態へ変化する様子を、後者は主に中性子の原子弾き出し効果によって新たな酸素欠陥種が形成される様子をそれぞれ反映していることが明らかとなった。つまり、本研究の第一目標である照射損傷過程における電子励起と原子弾き出し効果を区別して観測することに成功した。更にESRや放射光を利用した真空紫外光吸収発光スペクトルの測定を行うことにより、シリカガラス中に存在する欠陥種の同定を行い、主にE'やE,B_2centerといった酸素点欠陥種が原子炉照射初期段階において生成していることが明らかとなった。
|