核分裂生成貴金属中の主要元素であるルテニウム(Ru)のケイ化物であり、半導体的性質を示すRu_2Si_3に同じく核分裂生成貴金属であるロジウム(Rh)をRuに対し原子数比で4%または6%ほど添加した試料について熱電性能に関する研究を行った。試料は所定の組成になるよう秤量したRu、Rh、Siを精製アルゴン減圧下でアーク溶融させ棒状に整形した後、浮遊溶融帯法(FZ法)にて測定用試料の作成を行った。熱電性能測定は室温から約1000Kの温度範囲で行った。ゼーベック係数はRh4%添加試料では無添加のものに比べ約3倍の大きさになり、800K付近でn型からp型への遷移が確認された。一方Rh6%添加試料では室温から数百Kの温度では4%添加のものに比べ小さな値となったが、そのままn型を保ちつつ800Kで最も大きな値を持った。電機抵抗率は4%添加試料は無添加のものに比べ約1桁小さな値となり、6%添加試料はその間の値であった。このことは電気抵抗率を最小にする添加量が6%以下の範囲に存在することを意味する。今回の結果から熱伝導率が文献値と同じであると仮定して無次元性能指数を計算すると4%添加試料では973Kで最大0.18、6%添加試料では873Kで最大0.22の値となり、これまでRu_2Si_3系熱電材料で得られた値の3倍以上となった。4%添加試料では今回の測定温度範囲の上限で最も性能指数が高くなっていることからさらに高温の測定を行うことでもっと高い性能が得られる可能性が大いにある。また今後は理論的な最適添加濃度を検証するためにホール測定を行った研究を進めていく予定である。又その結果を基により性能向上に寄与する添加元素の探索を実験および理論両面から行っていく。
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