極低温において誘電率が温度に対して強い依存性を示す強誘電体を利用すると、X線のエネルギー吸収に伴う温度上昇を、極低温においてある直流バイアス電圧が印加された強誘電体素子の静電容量変化に伴う電荷量として精度良く測定することが期待される。昨年度の研究で、誘電体マイクロカロリーメーターへの応用が期待されるSrTa_2O_6の含有量xをパラメーターとした(1-x)SrTiO_3_xSrTa_2O_6試料を作製し、小型の希釈冷凍機を用いて100mKから1.5Kの温度領域において作製した試料の静電容量温値を評価した。測定結果より、100mK近傍において、x=1.0%のMnCO_3添加(1-x)SrTiO_3_xSrTa_2O_6誘電体試料は、非常に大きな静電容量温度変化率を有し、誘電体マイクロカロリーメーターへの応用が期待されることを示した。そこで本年度は、x=1.0%のMnCO_3添加(1-x)SrTiO_3_xSrTa_2O_6誘電体試料を用いて、厚さ0.15mm、幅1mm、長さ2mmの形状を有し、室温における静電容量が約40pFの誘電体マイクロカロリーメーター素子を試作した。希釈冷凍機を用いてこのマイクロカロリーメーター素子の100mKから1.5Kの温度領域における静電容量温度依存性を測定し、100mK近傍において静電容量温度変化率を有することを確認した。さらに、マイクロカロリーメーターを動作する際に必要となる高精度の温度制御システムを検討した。検討した結果、PID制御に基づく温度制御システムを設計・試作し、誘電体マイクロカロリーメーターによる粒子線検出実証試験の準備を行った。
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