研究概要 |
本研究は,広い領域の地表から発生する水蒸気,二酸化炭素,メタンなどの温室効果ガスの地表境界層への輸送量(ガスフラックス)を無侵襲かつ実時間で測定できる可搬型装置を開発し,屋外の"その場"計測により,温室効果ガスの発生機構解明のためのデータ収集を行うことを目的としている.補助金交付初年度においては,以下の2項目を計画していた.各項目に沿ってその成果を示す. [1.ガスフラックス計測装置基本部分の製作] シンチレーション風速計の光源に近赤外レーザを用いることに伴う近赤外線対応の新光学系の設計と測定精度向上を狙ったシンチレーション風向風速計の計測回路の新設計・製作および性能評価を終えた.新光学系の製作は出射系に関してほぼ完成したが,受光部は受光素子感度の均一化を図る改良が必要となった. [2.試験運用・基礎実験] (1)可視光線を光源とし,本年度製作した風向風速計測回路を用いたシンチレーション風向風速計と2台の超音波風速計を用いて,室内風向風速の同時測定実験を行った.この結果シンチレーション風向風速計は光軸に沿った空間の積分風速を示している可能性を得た. (2)可視光線を用いたシンチレーション風向風速計と,赤外線半導体レーザを用いた吸収分光分析装置および2台の超音波風速計を稼働させ,風向風速と大気中湿度変動の同時測定実験を行った.その結果,風速と湿度の間には,時間スケールの大きい変動において強い相関がある可能性を得た. 以上の結果を通じて,提案開発している計測法および装置がガスフラックス計測に応える特性を有することを示唆する成果を得ることができた.今後は,フラックス計測法を確立し装置としての完成を目指す.
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