研究概要 |
本研究は,現在,多面的な予測が必要とされている開発問題である東京湾三番瀬の埋め立て計画の影響を評価することを目的としたものである。 既に昨年の時点で木更津周辺と館山周辺(コントロールとして)で採取してきた水サンプルのデータと,文献資料,千葉県による環境影響予測データを,個人レベルの機会的な故障蓄積に応じて死亡への雪崩がある確率で起こり,その確率がこれらのデータによって与えられる環境に依存して変化するように設定したモデルに組み込み済みであり,漁業従事者の調査によって環境変化がどのようにヒトの生存に影響するかという点についてのデータ収集を続けているが,実際の予測は実施できなかった。その理由は,死亡モデルのさらなる改善を行い,より実際の死亡のプロセスを正しく表現するモデルを構築するのに時間がかかったこと,漁業従事者の調査をより多面的に進める必要があることの他,埋め立て規模縮小計画が発表されたことによって影響評価に必要な条件が変わってきたためである。縮小計画発表後も,環境大臣の現地視察などにより三番瀬をとりまく状況は大きく変化してきている。こうした状況において,影響評価をするためには,たんに自然環境と人間の健康だけではなく,経済的,心理的,文化的なさまざまな側面を踏まえたコストベネフィットの評価が必要であり,生態経済学的なモデル構築が必要とされるが,今年度はその分野の先行研究のレビューを行い,これまではすべてを経済的側面に還元して捉えるCVMのような手法か,Nature Serviceのような意味で自然そのものの価値を評価する手法がほとんどであったことを明らかにし,その中間に位置し,かつ両者を包含するような,多次元で構成される開発影響についての総合的な評価を行うモデル構築の可能性を検討したことも本年度の研究実績である。
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