研究概要 |
1.ニホンザルの微量元素蓄積 山梨県のニホンザルから、脳、肝臓、腎臓、脾臓、肺、精巣、心臓、筋肉、毛、尻ダコなどの組織を供試した。東京農工大学で、マクロウエーブ加熱分解法を耐圧フッ素樹脂容器の作成と併せ検討し、出力などの処理条件を確立した。微量元素は、重金属類を含むAg,Al,As,Ba,Be,Bi,Ca,Cd,Co,Cr,Cu,Cs,Fe,Ga,Hg,In,K,Li,Mg,Mn,Na,Ni,Pb,Rb,Se,Sr,Tl,V,Zn,Th,Uを選択し、山梨県環境科学研究所の誘導結合プラスマ質量分析(ICP-MS)により測定した。 (1) 体内分布: 肝臓が、最も多くの元素において高濃度であった。しかし、各組織は特有の蓄積を示し、脳や腎臓、肺は数種の元素が高かった。また、硬組織である毛はアルカリ土類金属などを極めて高濃度で蓄積し、かつ軟組織とは異ったパターンが認められた。 (2) 雌雄差: オスは毛にCuを高濃度で蓄積していたが、軟組織ではSe,Rb,Sb,Pbといった元素がメスで高かった。この雌雄差は、メスの生理現象が関与している可能性も考えられ、詳細な解析の必要性が示唆した。 (3) 成長に伴う変動: Cdは様々な組織で加齢に伴う濃度上昇が確認され、この元素の潜在的危険性が日本の大型陸上哺乳類においても示唆されていた。また、肺においてVおよびBaの年齢蓄積が確認され、化石燃料や自動車走行の伴う大気汚染の関与が推察された。 2.試料収集および新たな分析対象元素の検討 山梨県でツキノワグマ、ニホンザルおよびニホンジカの、中国地方でニホンイノシシの試料を入手し、冷凍保存した。また、測定した31元素に加え、近年、ハイテク産業で大量に使用され、環境への影響が懸念されている希土類元素を含めた超微量元素を39種(Ce,Dy,Er,Eu,Gd,Ho,La,Lu,Nd,Pr,Sm,Sc,Tb,Tm,Yb,Y,Au,Ir,Pd,Pt,Rh,Ru,Sn,Te,Hf,SbおよびB,C,Ge,Mo,Nb,P,S,Si,Ta,Ti,W,Zr,Re)選択し、分析精度および確度の検討を行っている。
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