本研究では、廃水処理の高度化を図る方法の一つとして、多機能な菌を育種しこれを利用した処理系の構築を最終的な目的としている。本年度では育種した菌の遺伝子的および生物活性安定性を計ることを目的として育種菌を包括固定をおこない、その効果について次の結果を得た。 1.脱ハロゲン化酵素遺伝子を導入した遺伝子組換え大腸菌を作成し、脱ハロゲン化酵素の発現条件について検討した結果、誘導物質がモノハロ酢酸、なかでもクロロ酢酸、ブロモ酢酸の場合に特に大量に発現していた。 2.誘導物質としてのクロロ酢酸存在下において、遺伝子組換え大腸菌の実験開始直後の脱ハロゲン化酵素活性は非常に高かったが、時間が経過するにつれてその酵素活性は低下し、同時に組換え遺伝子も消失していった。これは誘導物質が分解され失われたこと、酵素の設計図である遺伝子が失われたことによるものと考えられた。 3.寒天およびポリアクリルアミドを担体として上記組換え大腸菌を包括固定化したところ、固定化操作の前後で活性は大きく失われたものの、固定化菌体の生物活性の時間的減少は緩やかであり、生物活性の安定化に対して固定化法はその効果が認められた。 4.固定化担体からの遺伝子組換え大腸菌の漏出が認められた。その廃水処理への利用については固定化を行った場合においても、漏出防止の手段を講じる必要が示唆された。
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