1.和歌山(6個体群)、京都(1個体群)および札幌(1個体群)産シマアメンボ成虫のエステラーゼザイモグラムを比較した。関西の各個体群内における変異性は極めて高かったが、札幌個体群内の変異は検出できなかった。札幌個体群と同様のバンドパタンは関西においては標高800m以上の個体群に存在した。新規購入した系統樹作成ソフトウエアを駆使して、ザイモグラムに基づく系統樹を作成すると、札幌個体群と高野山個体群が1つのクラスターをなし、関西の異所個体群は多様な組合せで多数のクラスターをなすことを確認した。 2.5種アメンボの生息環境の相違を、照度、植生および池の汀線構造の観点から検討し、これら3要素のいずれもが「棲み分け」をもたらす要因となっていることを明らかにした。特に、産卵基質および静止場所としての植生および汀線の物理的構造は生息場所選択の上で重要であることを野外観察および飼育実験によって解明した。 3.和歌山県未記録の水生半翅類昆虫(他地方レッドデータ掲載種)の和歌山県における周年経過を野外観察によって確認した。また、本種の生息場所としては一般に水深1cm以下の遊離水のあるところが利用されることを確認した。また、和歌山県内の異なる局所集団の個体群間で体サイズに差異の有ることを確認した。 4.昨年度報告済みの2項目(シマアメンボの移動性およびアザミウマの多型現象)を査読付き学術論文に公表した。
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