超音波照射によって発生する高温高圧のキャビティを、地下水汚染物質である揮発性有機塩素化合物(トリクロロエチレン、四塩化炭素等)の分解に適用した。超音波分解反応は均一溶液系でも進行するが、分解効率を上げるために不均一水溶液系における超音波照射効果について検討した。アルミナ等の金属酸化物の添加によって、分解が促進されることが認められた。一方、吸着剤としても作用するゼオライトを添加した場合、分解の抑制と促進の両方のケースが確認された。例えば、ゼオライトの細孔サイズの比較的大きいY-ゼオライトを添加した場合、四塩化炭素の分解は無添加の場合と比べて遅くなった。これは四塩化炭素がゼオライト細孔内部に捕捉され、超音波照射によって生成する高温場に接することができなくなり、分解が抑制されたものと考えられた。一方、細孔径の小さいゼオライトの添加では、分解促進効果が認められた。本研究結果から、分解対象物質を効率よく分解させるためには、バルク溶液中もしくは添加している粉末表面に対象物質を存在させておく必要があることが提案された。比較実験として、アルミナを含む不均一水溶液中においてアルコールの超音波分解反応を行った(Pd(II)の還元速度を測定することによりアルコールの分解速度を見積もった)結果、アルコールの分解速度はアルミナの存在やその添加量によってはほとんど影響されなかった。最近、不均一溶液系において超音波照射すると、生成するキャビティの数が均一溶液系の場合よりも増えることが示唆されているが、本研究ではキャビティ数の増加だけでは説明できない実験結果が得られた。金属酸化物を含む不均一系で有機塩素化合物の分解反応が促進される理由として、酸触媒効果が作用しているものと考えられた。
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