本研究では自動車交通の外部費用の計測および、自動車関係諸税のグリーン化の評価をおこなった。 わが国では宇沢弘文(1974)『自動車の社会的費用』がよく知られているものの、厚生経済学に立脚した自動車交通の外部費用の定量的、総合的評価は先進諸国と比較して十分におこなわれてこなかった。本研究では大気汚染、気候変動、騒音、事故、インフラ費用の過少負担、混雑の6項目について総外部費用(高位、中位、低位)を計測した。ただし「バリア効果」などは含めていない。これら外部費用への寄与を乗用車、バス、大型トラック、小型トラックの4車種に分解し、走行距離当たり、人kmまたはトンkmあたりでも計算した。「統計的生命の価値」を用いたことなどから、交通事故による損失は総務庁による推計より大きい値となった一方、混雑損失については建設省による推計より小さい時間価値を用いたことから、小さい値となった。現段階においても暫定的な数値ではあるが、外部費用は年間32.5兆円(19.7〜60.4兆円)、GDPの6.6%(4.0〜12.3%)と算出された。中位推計値は、乗用車の場合で28.6円/km、20.3円/人km、大型トラックの場合で136.5円/km、46.0円/トンkmに相当する。 自動車関係諸税のグリーン化については、2000年度税制改正要望と2001年度税制改正とを比較、評価した。後者には前者と比較して改善された点があるものの、むしろ改悪となりグリーン化の趣旨に合致しない疑いのある部分がある。また今後のより抜本的なグリーン化に向けての課題とあるべき方向性を検討した。一例を挙げると、先進諸国とわが国との比較や先進諸国における潮流、外部費用の大きやその発生時点をふまえると、車体課税のグリーン化に限定せず、自動車の使用段階の課税にグリーン化の余地がある。
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