研究概要 |
都市下水(低濃度排水)処理を対象とした無加温嫌気性排水処理バイオリアクター・システムを新規に製作し,その排水処理特性を評価した。バイオリアクター・システムは,大別して,前段のUASB(嫌気性汚泥床)型反応槽と,後段の好気性固定床で構成した。前段のUASB型反応槽は,排水を上昇流で供給する形式で,内部に固液分離装置およびスカムブレーカーを有するものである(全容積404L;内径270mm,高さ5,000mm)。また,反応槽内保持微生物と下水(基質)との接触効率(混合効率)を向上させるために,反応槽運転途中から反応槽内撹拌羽根装置を装着した。後段の好気性固定床は,反応槽内に生物膜形成のための接触材を充填し,前段UASB反応槽からの処理水を自然流下させる固定床とした(全容積750L;内径500mm,高さ1,300mmの固定床を3基設置)。本装置は屋外に設置し,加温制御無しとした。本装置に都市下水を連続的に供給してその処理特性を評価した。前段UASB反応槽の運転は9月から開始し,後段処理装置の運転は12月から行った。この結果,運転全期間平均で,気温11℃,水理学的対流時間(処理時間)7時間という条件において,流出CODcr濃度90mg/L流出溶解性CODcr濃度44mg/Lという良好な処理水質を得た(なお,流入全CODcr濃度は350mg/Lであった)。運転5ヶ月後において,本システムは,流出BOD濃度10〜20mg/L以下,浮遊性物質SS濃度30mg/L以下という優れた処理特性を発揮し,現在都市下水処理に広く適用されている好気性標準活性汚泥法と同等の水質レベルを実現した。また,後段好気性固定床で,流出浮遊物質を捕捉し,自己消化させることにより,システムからの汚泥排出(余剰引き抜き廃棄物汚泥)はゼロであった。今後は,年間を通した処理水質変動,および栄養塩除去について検討を進める。
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