近年、環状イミノ骨格を有する食中毒の原因物質、ピンナトキシンが沖縄産タイラギ貝から、またギムノジミンがニュージーランド南島産カキから相次いで発見された。これら毒の作用機構解明と予防の観点から有機合成的手法による分子レベルの研究が強く求められている。ピンナトキシンは非常に特異な5つの環状アセタールとスピロ環状イミンを骨格中に有している。今回、直鎖化合物より一挙に高選択的に5つの環状アセタール、すなわちBCDEF環部位を構築する反応を見出した。また、AG環部位のDiels-Alder反応による構築についても検討を行った。モデル反応として、α-メチレンラクタムを不斉銅触媒下、種々のジエンと処理したところ、分子間Diels-Alder反応が収率良く進行し、高エナンチオ選択的に望むエキソ付加物を与えることが判明した。本法は、ギムノジミンとピンナトキシンの双方に応用可能な一般性の高い方法と考えられる。また、シトロネル酸よりピンナトキシンのA環部に相当するvic-ジメチルラクタムを合成し、同様なDiels-Alder反応によりAG環部位の合成を行った。
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