研究概要 |
昨年度の研究において、発色団としてはメチルチオフェニルが最も適していることが判明したので、まず、ケンプのトリアシッドと発色団を縮合させた化合物を合成した。合成プロセスを改良した結果、簡単かつ容易に発色団との連結に成功した。(収率88%)また、4-メチルチオフェニルアミンをグルタミン酸無水物と脱水縮合させ、オプシンシフト計算の際の基準とする化合物とした。この化合物の紫外吸収は、258.6nm(Ethanol)であった。次に、残ったモノカルボキシレートに種々の官能基の導入を試みた。効率的に多くの類縁体を合成するために、カルボン酸を酸塩化物としたのち、種々のアミン類と反応させた。ベンジル基でカルボキシル基を保護したグリシン、グリシン、ヘキシルアミンなどをアミド結合として導入した。構造は各種機器分析により確認した。それぞれの紫外吸収における極大波長は、259.0,259.2,259.2nm(EtOH)であり、基準物質と比較すると、それぞれ、0.1,0.6,0.6nmの差であった。また、オプシンシフトとして計算すると、60,90,90cm-1にとどまった。グリシンを結合させた化合物は、トリエチルアミンの添加によりその吸収極大が、ジクロロエタン中、260.8nmから259.1nmへと低波長シフトした。いずれの場合も、期待したほどのシフトを得ることができなかったので、次に、エチレンジアミンとその誘導体を結合させ、カチオンを近接させてみつこととした。二つの誘導体は272.6,273.1nmに吸収極大を示したが、イミドの交換が起こった可能性があり、現作、構造確認を行っている。更に、天然物をコア化合物として使用する目的で、天然物(-)-spirobrassininの絶対配置決定を行った。
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