研究概要 |
本研究では,デオキシリボ核酸(DNA)二重鎖に結合する有機分子の開発・探索を行うべく,新たな合成手法の開発に基づいたDNA結合分子の開発・探索を行うことを目的としている.今年度は主に,フラーレンを基礎骨格としたDNA結合有機分子の設計・合成を行うべく,その基礎となる合成手法の確立を目指し検討を行った.その結果,新たなDNA結合分子として有効と考えられるフラーレン・ポリアミン複合体の簡便な合成手法を見いだした.この手法はフラーレンに対する第二アミンの光化学的付加反応であり,フラーレン上に一段階で四つのアミン残基を導入した特異な立体構造を持つフラーレン・ポリアミン複合体の選択的合成を行うことが出来た.得られたフラーレン・ポリアミン複合体については,予備的検討により二重鎖DNAに対する結合力を持つことを見いだし,現在その詳細について検討を行っている.また,同じ手法を用い二つのフラーレン間に四つの架橋鎖を構築することで,フラーレン二分子の間にカゴ構造を持つフラーレン・ポリアミン複合体の合成を行うことができることを見いだした.得られたカゴ分子についてはX線構造解析によりその構造を明らかにした.さらに,その物性に関する検討を行ったところ,二つのフラーレンの遷移モーメント間の相互作用に起因する淡色効果が見られることを見いだした.現在,DNA結合分子,およびカゴ分子のもつ機能についてさらなる検討を行っている.
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