本研究は、スリランカ産の糖尿病向け生薬から単離され強力なグルコシダーゼ阻害活性を持つサラシノールを大量に供給するための化学合成法の確立を第一の目的とする。また、このサラシノールの構造活性相関を調べるため各種誘導体を合成し、そのグリコシダーゼ阻害活性を測定することを第二の目的とする。サラシノールはチオフラノースの環硫黄原子がアルキルスルホニウムイオンの形でエリスリトールとの間で脱水縮合しており、エリスリトール側鎖上にある硫酸基との間で分子内で塩を形成することにより一種のスピロ環状構造を形成している。この構造をチオフラノースとエリスリトールの環状硫酸エステル誘導体の間の求核置換反応により構築できることを明らかにした。これによりサラシノールの大量供給法を確立するのと同時に立体配置を決定することができた。また、同様の方法で各種誘導体を合成し、これらの各種グリコシダーゼに対する阻害活性を測定することにより、スルホニウムイオン構造とエリスリトール側鎖の構造がともにサラシノールのグルコシダーゼ阻害活性において重要な役割を果たしていることを明らかにした。この結果は、スルホニウムイオン構造をベースにした全く新しいタイプのグリコシダーゼ阻害剤を開発するにあたり非常に重要な情報となる。
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