1 ナノ太陽電池(光合成モデル系)の構築 フルオレッセインとローダミンを修飾したチューブリンから微小管を調整したところ、微小管上の色素間に励起エネルギー伝達が起きていることが分かった。また、エオシン(増感剤)を修飾した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に光を照射したところ、エオシンからHRPへの光誘起電子伝達を示唆する結果を得た。したがって、エオシン修飾HRPをチューブリンに修飾した上で、これをフルオレッセイン修飾チューブリンと混合して微小管を調整すれば、リサイクル可能なナノ太陽電池(光合成モデル系)となる可能性が高いことが分かった。現在は、最終段階の組み立てを検討しているところである。 2 情報処理ナノデバイスの構築 生体内のある情報伝達系では、迅速かつ効率的な情報処理(情報伝達物質の授受・変換カスケード)を実現するために、複数の情報伝達蛋白質が「足場蛋白質」を核に集合した蛋白質複合体が機能している。この蛋白質複合体のモデルとして、グルコースオキシダーゼ(GOD)と西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を表面に集積した微小管を構築した。この酵素修飾微小管にグルコースを与えたところ、GODとHRPの逐次反応によるカスケード(グルコース→過酸化水素→色素酸化物)が成立した。また、このカスケード反応の速度は、酵素が溶液中に分散している場合よりも速かった。このことから、上記の情報伝達蛋白質複合体のモデルを初めて構築すると共に、迅速且つ効率的に一連の物質変換(情報処理)を行なうナノデバイスを構築できたことが分かった。 3 その他 上記ナノデバイスにより幅広い光機能を付与するために、ビオチンを末端にもつ、水溶性のクロロフィル誘導体の合成を試みている。
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