研究概要 |
脱窒菌Alcaligenes xylosoxidans 由来の亜硝酸還元酵素(AxNIR)は、酵素中に2原子の銅イオンを持つ銅タンパク質であり、タイプ1銅部位で電子供与体から電子を受け取り、タイプ2銅部位で亜硝酸イオンを一酸化窒素に還元する反応を触媒すると考えられている。AxNIRを含む銅含有NIRはX線結晶構造解析によりその構造が明らかであるにもかかわらず、触媒反応機構に関する研究は殆ど行われていなかった。そこで本研究ではAxNIRを対象に、活性中心タイプ2銅周辺に存在しすべての銅含有NIRに保存されているAsp98,His255に着目し、これら2残基を部位特異的に置換したAsp98Ala,Asp98Asn,Asp98Glu,His255Ala,His255Lys,His255Argの6種の変異型NIRを作製した。各変異型NIRのESR,CD,紫外可視スペクトル等の分光学的性質は野生型酵素とほとんど変化せず、変異導入による大きな構造変化は観察されなかった。これに対して、すべての変異型酵素の亜硝酸還元速度は野生型酵素の0.4〜2%に大きく低下していた。また、Asp98変異体においては基質亜硝酸に対するK_m値も大きく上昇した。これらの結果から、Asp98,His255の2残基は触媒反応および基質結合に関与する残基であり、反応に必要なH^+を供給する一般酸塩触媒基として作用することが明らかになった。
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