研究概要 |
ゴルジ体は真核細胞におけるタンパク質の分泌過程で中心的役割を担う細胞内オルガネラである。近年、ゴルジ体膜上に三量体型GTP結合蛋白質の存在が示され、ゴルジ体の機能にこの分子が重要な調節機能を果たしている可能性が示唆されてきた。本研究では、ゴルジ体の構造維持機構に関与する三量体型GTP結合蛋白質の分子種を同定し、その作用機序を明らかにするために以下の研究を行った。 1.ゴルジ体の構造維持機構に関与する三量体GTP結合蛋白質の同定 細胞をNordihydroguaiaretic(NDGA)で処理すると、ゴルジ体が速やかかつ可逆的に分解し、この過程には三量体型GTP結合蛋白質が関与していると考えられている。このGTP結合蛋白質の分子種を同定するために、種々の三量体GTP結合蛋白質サブユニットを培養細胞で一過性発現させ、NDGAによるゴルジ体の分解作用への影響を検討した。その結果、Gαz及びGαi2を過剰発現させることによってNDGAによるゴルジ体の分解が抑制された。 2.Gαドミナントネガテイブ・ミュータントとRGS(Regulator of G-protein Signalling)を用いたシグナル伝達機構の解析 ゴルジ体の構造推持機構におけるGαzの役割を詳細に解析するために、Gαzの3ヶ所のアミノ酸に同時に変異を導入したドミナントネガテイブ・ミュータント(G204A,E246A,A327S)を作製した。このミュータント細胞内で過剰発現させると、ゴルジ体の分解が認められた。また、Gαz特異的なRGSであるRGSZ1を過剰発現させた場合にもゴルジ体の顕著な分解が認められた。これらの結果から、ゴルジ体の構造維持にGαzが関与している可能性が強く示唆された。
|