最近分子間距離を測定する方法としてパルスESR法が大きく発展している。特にパルスESR法の技術の一つであるパルスELDOR法を用いれば長距離のラジカル間距離を高感度で測定することができる。(原理的には150Åまでのラジカル対を1Å以下の精度で観測することが可能)パルスEPRを用いた距離の測定法は非常に有効な方法でありながら測定対象が不対電子間のみに限られるという制約がある。これを測定技術面及び試料の面より改善し新たな方法を開拓するのが本研究の狙いである。一つの解決法として遺伝子操作によるタンパク質アミノ酸の装飾によりタンパク質上の任意の位置に金属の結合サイトを人工的に作成し距離を測定する方法を試みている。この手法をもちいれば遺伝子配列として既知のアミノ酸間の立体構造上での距離を求めることが可能になる。単純に任意のアミノ酸位置についてこのプロセスを繰り返すことにより、アミノ酸位置の相対的な距離は求まると考えられる。本年度はクラミドモナスにhistidine-tag(5つのイミダゾール基の連なったもの)を挿入した試料を大量に作成し、ESR測定に最適なhistidine-tagに配位させる金属の選定を行った。 パルスELDOR法を用いて光合成光化学系II内のアミノ酸残基やクロロフィル分子等の位置の特定を行うことができた。
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