本研究では、チョウセンアサガオレクチン(DSA)がアストロサイトを分化誘導するという独自の知見を利用し、依然未解明であるアストロサイトの分化の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。 初年度である本年度はアストロサイト分化にかかわる受容体分子単離のため、アストロサイトNP-40可溶化画分より、DSA結合画分を調製し、いくつかの糖タンパク質のバンドを得た。その画分の中にはN-CAMも確認された。さらに興味深いことに、アストロサイトにはないとされていたN-CAM180と呼ばれるアイソフォームが実はアストロサイトに存在し、他のN-CAM140、N-CAM120と異なり、DSA結合糖鎖を必ず持つことも明らかにした。また、神経細胞のN-CAMはN-CAM180も含め、DSA結合糖鎖を持たないこともわかった。 また、DSAと同様の糖結合特異性を持った分子が生体内で実際にアストロサイトの分化を誘導していると考え、生体ラット脳よりDSA結合糖鎖を持つアシアロフェツインに結合する画分を調製した。結合画分には、いくつかのタンパク質が回収された。その画分を未分化アストロサイト培養系に添加することで、アストロサイトが星状に形態変化することがわかった。このことは脳内に糖鎖結合能を持ったアストロサイト分化誘導因子があることを示唆するものであり、現在、glial fibrillary acidic protein(GFAP)量の変化等を調べ、この形態変化が分化であることを確認し、アシアロフェツイン結合画分より、アストロサイト分化誘導因子の単離を準備している。
|