免疫グロブリン遺伝子への体細胞突然変異は、転写に共役した機構で誘導されている。一方、免疫グロブリン遺伝子の転写反応は、プロモーター領域のDNAメチル化により厳密な制御を受けていることが知られている。本研究では、DNAメチル化による転写制御システムが、体細胞突然変異誘導にいかに関与しているか明らかにする。メチルDNAによる転写制御は、数種のメチルDNA結合タンパク質(MBD)により遂行されている。まず、そのうちの一種MBD2に結合する分子を酵母ツーハイブリット法により検索し、新規分子(MIZF)のクローニングに成功した。以下に、本解析により得られた結果について記述する。 1、全長のcDNAクローニングから、MIZFは7つのZnフィンガーモチーフを有する新規分子であった。 2、MIZFの発現ベクターを用いた解析から、MIZFは核に局在していた。 3、MBD2とMIZFの結合にはMIZFのC末端の4つのZnフィンガーが重要であった。 4、ルシフェラーゼ活性測定の結果、MIZFには転写抑制活性があった。 5、この転写抑制活性はC末端の4つのZnフィンガーを含むMBD2結合領域に存在し、トリコスタチンA感受性であることから、MBD2が関与するヒストン脱アセチル化酵素依存性の抑制反応であることが示唆された。 6、MIZFmRNAの発現をノーザンブロット法で解析したところ、脾臓で発現が認められ末梢血リンパ球では低下していた。 以上の結果より、MIZFはDNAメチル化による転写制御において、MBD2依存性の転写抑制反応に関与していることが判明した。一方、MIZFは体細胞突然変異が盛んに行われている脾臓組織において発現が高いことが明らかとなった。今後は、B細胞分化誘導や体細胞突然変異誘導へのMIZFの関与を、我々が構築したJ558L細胞を用いた体細胞突然変異検出系にて詳細に解析していく方針である。
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