研究概要 |
cortactinはSrcチロシンキナーゼの基質として見いだされたアクチン繊維結合タンパク質である。ヒト相同タンパク質は乳がんの原因遺伝子と考えられるEMS1にコードされる。我々はマウスとハエでcortactinが細胞接着装置の裏打ちタンパク質ZO-1に結合することを見いだした。cortactinは多細胞生物に必須の細胞接着を担う分子の1つで,細胞の増殖・分化を制御する,細胞間シグナル伝達に含まれる可能性もある。本研究はcortactinの機能をマウス乳腺上皮組織由来の培養細胞で検討し,乳癌発症機構の解明を目指すものである。 本年度研究実績 (1)免疫染色より,上皮性培養細胞HC11において,cortactinが細胞間接着部位でZO-1と共存する事を明らかにした。 (2)HC11細胞でcoractinを強制発現する系を構築した。cortactinは幾つかの特徴的なドメイン構造を有する。37アミノ酸を単位とする,6.5回の反復配列は,アクチン繊維結合に必須である。反復が5.5回,4.5回のイソ型の存在も報告されている。C末端のSH3ドメインは,ZO-1等とのタンパク質間相互作用に関わる。反復配列の異なるイソ型(6.5,5.5,4.5回型)に加え,反復配列,SH3ドメインの欠失変異型cortactinを発現する組み換え遺伝子を構築し,HC11に導入した。各イソ型,変異型の細胞内局在を検討する為に,cortactinをGFPとの融合タンパク質として発現する組み換え遺伝子も構築済みである。 来年度は,これら組み換え遺伝子導入細胞の,運動性,接着性,分化能を比較検討し,coractinの細胞接着,シグナル伝達系への関与とその樹能にせまる。予備的知見ながら,各イソ型cortactinを過剰に発現する細胞では運動性が上昇する傾向が認められている。
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