小胞体は、蛋白質の高次構造形成や細胞内Ca^<2+>濃度調節などを担う細胞内オルガネラである。何らかの理由でその機能が破綻したり過負荷状態になると、細胞は小胞体ストレス応答と呼ばれる反応を示す。近年私達は、血栓症誘発物質として知られるホモシステインが小胞体ストレス応答を誘導することを見出し、さらに小胞体ストレスで発現誘導される新規蛋白質Herp及びRTPを発見した。そこで本研究は、「小胞体ストレス応答機構の解明」「両蛋白質の機能探索」「高ホモシステイン血症の病態発症機序解明」を主目的として計画された。以下に本年度の成果を列記する。【Herp及びRTPの転写調節機構】レポータージーンアッセイによって、Herp遺伝子においても既知の小胞体ストレス応答シスエレメントERSEが機能していること、さらに新規エレメントERSE-IIも関与していることを見出した。両エレメントが相加的に働くらしい。一方、RTP遺伝子にはいずれの配列も存在せず、別のエレメントあるいは転写以外の段階で発現調節されている可能性が示唆された。【Herpの小胞体局在】Herpは、他の小胞体ストレス蛋白質と異なり、小胞体膜に局在する。そのトポロジーを解析すると、分子の大部分が細胞質に露出していることが明らかになった。これは、Herpが小胞体内腔の蛋白質に対してシャペロン様活性を発揮しない可能性を示す。【RTP相互作用蛋白質の同定】酵母Two-Hybrid系を利用してRTP相互作用蛋白質の同定を試みたが、陽性クローンは得られなかった。【RTPのリン酸化】RTPのリン酸化残基を特定するため、多くのRTP変異体発現ベクターを構築した。【Herpノックアウトマウス作成準備】マウスHerpの遺伝子構造を調べ、Herp欠損マウス作成用ベクターを構築した。以上の成果を基盤にして、次年度の研究を進める予定である。
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