通産省工業技術院電子技術総合研究所の好意により、電圧感受性ナトリウムチャネル蛋白質の極低温電子顕微鏡画像を入手した。画像処理により劣悪なS/N比を持つ画像のコントラスト調整を行い、電子顕微鏡画像及び蛋白質粒子が存在する位置をコンピュータディスプレイ上に表示した上で、オペレータのマウス操作により蛋白質粒子を拾い上げる「蛋白質単分子拾い上げソフトウェア」を開発した。このソフトウェアを使って約20枚の電子顕微鏡画像から約2万個の蛋白質分子像を拾い上げる事に成功した。 この蛋白質単分子像をグループ化、平均化して、見かけ上のS/N比の良い蛋白質分子の透過像のセットを作成し、さらに各透過像がどの方向から蛋白質分子を透過したものなのかを最適推定するために必要なコンピュータアルゴリズムの検討を行った。その結果、計算の実行には多大な計算機資源を必要とする事が判明した。これらの計算を実行するために、高速浮動小数点演算が可能であるアルファチップ搭載型ワークステーションを複数導入し、ワークステーションクラスタとして稼動させるための基本的なソフトウェアの開発を行った。その上で、アルファワークステーションクラスタ上で稼動する、蛋白質透過像の透過オイラー角自動最適推定を行うコンピュータアプリケーションを開発した。 上記約2万個の蛋白質単分子像をグループ化、平均化して得られたS/N比の良い蛋白質透過像約30個を使って、それらの透過オイラー角自動推定を行い、さらに蛋白質透過像のバックプロジェクション計算を行う事によって、電圧感受性ナトリウムチャネル蛋白質の3次元密度マップ第1次モデルの作成する事に成功した。
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