タンパク質として、プロテアーゼの1種サチライシンを用いて、低温での高機能化を進化工学の手法を用いて果たした。具体的には、まず、サチライシンの遺伝子を出発点として、error-prone PCR法という手法で、ランダムに遺伝子DNAに変異を生じさせた。変異確率は、第1回目の集団では、アミノ酸変異として平均2.7個、第2回目の集団では平均1.0個の割合で起こった。第1集団については、サチライシンを単離、精製し、酵素反応速度のパラメーターを分光測定によって求め、活性上昇率が10℃において、3%であることを見い出した。上昇率が高くないのは、変異が多いにもかかわらず、サンプリング数(4万個)が少ないためであると見積ることができたので、第2集団から選び出すことにした。この結果、野生型に比べ明らかに高速に活性が出現するものが約10種、特に2倍以上高速なものが2種得られた。また、高活性体の中で、共通する位置に変異があるものが複数得られ、これら「ホットスポット」を同定することができた。現在これら高活性体の酵素反応速度パラメーターの定量測定を行っている。 一方、サチライシンの一部とアミノ酸配列の相同性のあるタンパク質POIA1について、その立体構造を核磁気共鳴法を用いて決定した。また、構造の基本単位であるαヘリックス構造やβシート構造についての構造生物学的な基礎研究を各種測定法を用いて行った。この結果、長くつらなったβシート構造の意義、分光学的な測定法の開発などに成功した。
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