本研究は、全長σ因子のプロモーター特異的なDNA認識機構、および酵素複合体としてどのように相互作用し機能を発揮しているのかを、X線回折法により詳細な立体構造を得て、原子レベルで解明することを目的とした。 平成11年度は、解析に適した単結晶を得ることを目標とした。効率のよい蛋白質の発現と精製の手順は確立できたが、σ因子あるいはσ因子と合成DNAとの複合体での結晶化は、広範な検索を行ったが成功しなかった。次に、σ因子と強く相互作用して複合体を形成するanti-σ因子に着目し、蛋白質複合体としての発現と精製条件を詳細に検討し、結晶化に適した高純度の標品を得ることが可能となった。 平成12年度は、得られた単結晶から立体構造解析を進める予定であったが、平成11年度中に解析に適した単結晶を再現性よく得ることができなかったため、σ因子とanti-σ因子の複合体による結晶化条件の検索を続行した。現在までに、全長σ因子とそのanti-σ因子の複合体の単結晶を再現性よく得ることに成功している。ただし、結晶のサイズが大変小さく、放射光を用いなければ解析を進めることが不可能であるため、より大きな単結晶の作成を試みている。放射光を利用した場合、現状の単結晶のサイズ(20ミクロン程度)でも、複合体の回折強度データを集めることに成功した。 今後、継続して位相決定のための重原子置換体あるいはSe-Met置換体の調製を行い、早期の構造解析の成功を目指す。
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