(1)シアン結合型構造の2.8Å分解能での精密化、シアンの結合様式 これまでの構造解析の結果から、酵素活性中心(Fe_<a3>-CU_Bサイト)に結合したシアンの電子密度が見いだされた。シアン構造の精密化の結果、シアンとFe_<a3>との結合距離は2.3Åであり、シアンとCU_Bは2.7Åの距離で相互作用していることが示唆された。また、シアンはヘム面の垂直方向に対して傾いて結合していることが分かった。 (2)シアン結合型酵素の高分解能構造解析 シアンの結合様式、酵素の構造変化に関する精度を更に向上させるため、高分解能でのX線回折データの収集を行った。シアン溶液中でソーキングを行った結晶を低温窒素気流で急速凍結させ、放射光を用いてX線回折実験を行うことにより、2.3Å分解能以上での構造解析が可能なデータが得られた。現在解析作業を進めている。 (3)混合原子価型結晶標品の作成 新たに顕微分光装置を作成し、それを用いてシアン結合型酵素の結晶標品の吸収スペクトルを測定することができた。更に、結晶に還元剤を添加してスペクトル変化を測定することにより、酸化還元中心の一部だけが還元された混合原子価型結晶のスペクトルが得られた。引き続き、結晶中で混合原子価型がより安定に存在する条件の検討を行う。 (4)酸素、阻害剤、水の移動経路 酵素の立体構造に基づく分子表面計算から、これまでに酵素内部にあるキャビティー(空隙)を見いだした。キャビティー内をプローブが移動するシミュレーションを行った結果、サブユニットIの膜貫通領域内にFe_<a3>-CU_Bサイトと酵素外部とをつなぐキャビティーが3カ所に確認された。これらは、基質の酸素、阻害剤、及び反応生成物の水の移動経路になっていることが示唆された。
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