本研究の目標は、Fプラズミド分配遺伝子産物SopA・SopBの構造と機能の解明である。今年度はSopA、SopB各々の構造と機能に関する研究を中心に行い、次の結果を得た。 1.SopBタンパク質の構造と機能SopBタンパク質の示すSilencing/IncG表現型のメカニズムと分配機能との関連を明らかにするために、Silencing/IncGを示さない変異体をスクリーンして表現型を分子遺伝学と生物化学的に調べ、以下の結果をえた。(1)野生型SopBタンパク質とGFPの融合タンパク質が細胞内では局在するのに対して、Silencing/IncGを全く示さない変異体はまったく局在しない。(2)野生型では、SopB結合配列近傍の遺伝子の転写や複製の抑制がおこるのに対して、変異体ではこれらが全くおこらない。(3)変異遺伝子をもつsopABC遺伝子のoriCピラスミドにおける分配機能は失われていない。(4)変異体タンパク質は野生型タンパク質と同様に細胞膜と相互作用する。2.枯草菌SpoOJタンパク質結晶化SopBタンパク質の結晶化の努力に引き続き、相同体である枯草菌のSpOJタンパク質と認識配列DNAの結晶化に取り組んでいる。大腸菌を用いた大量発現と精製に成功し、1Lの培養から30mgを回収できる。ハンギングドロップ法を用いて試行を行っているが、残念ながら結晶はまだ得られていない。3.SopAタンパク質の構造と機能SopAタンパク質のN末端とC末端の両側に抗原配列を付与したこのを発現・精製し、タンパク質のフットプリント法によって、ドメイン構造と機能の変化を追究した。その結果、このタンパク質はN末端側に特に消化酵素に感受性の部分があり、ATPとDNAの両方が存在するときに、この感受性が低くなることが分かった。ATP結合/分解によってDNAとの結合が可能になることを示唆している。
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