構造安定化溶媒(ソルビトールなどポリオール、フッ素化アルコールなど)の存在下におけるアミノ酸の溶解度の実験値に対して、それを元に蛋白質の天然構造から熱力学的安定性を計算するソフトを引き続き開発中である。また56アミノ酸残基からなるモデル蛋白質(proteinGのB1ドメイン)の構造と安定性、その形成の動的メカニズムヘの溶媒の効果を明らかにするために、引き続き残基を置換した蛋白質分子による複数本の変性シミュレーションを行った。前回行った真空中における500Kのシミュレーションに比べ、水溶媒中における変性状態では、分子の広がりが5割以上大きくなることが確認され天然状態の倍程度の増加でほぼ落ち着いた。一方、その時の緩和時間は、10倍程度遅くなった。この時、分子内の原子間の接触は天然構造の時の原子ペア間の接触が失われるのに対して、新しいペアが形成され、しかも非天然の2次構造形成も確認された。今回は計算した蛋白質一溶媒系のサイズが有限である効果のため、分子が溶媒からはみ出してヘリックス構造を作ってコンパクトになることも観測された。これは界面変性の過程をシミュレートした結果であるのかもしれない。今後は構造安定化に関するより詳細な過程を解析し、実験と比較しながら蛋白質の構造形成と溶媒効果の問題を解明し、定量的な理論の精密化を行う予定である。
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