典型的なrho-independent terminator(RIT)を持つ大腸菌crp遺伝子の下流に第二のRITとして大腸菌rmB遺伝子のRIT(rmBT1)を配したdouble terminator系では、二つのterminator間の距離が200bp以下の時に限り、crpterminator(crp t)を通り過ぎて下流側のterminatorまで転写されているmRNAが検出できる。これは転写が単純にRITで終結するのではなく、RITを超えて200塩基以内に転写が終結し、その産物がプロセスされることで結果的にmRNAの3'末端がRITにマップされていることを示唆する。この転写のreadthroughはcrpの翻訳に依存しており、翻訳終止コドンとRITの距離がある程度以上離れるとreadthrough効率が下がる。この現象がcrpに特異的なものではなく広く大腸菌の遺伝子について見られる現象であることを示すために大腸菌ゲノム上から終止コドンとRITとの距離が10塩基から15塩基程度とcrpと同程度の幾つかの遺伝子を選んで同様のdouble terminatorを構築し、readthoughの有無を調べたところ、dapD、speD各遺伝子においてcrpの時と同様に転写のreadthoughが観察された。しかし、crr遺伝子については現在までのところdouble terminator系でのreadthroughは見られていない。これらの結果から、翻訳に依存した転写のreadthroughがcrpの例に限らず一般的に言えること、単純に終止コドンとRITとの間の距離が転写のreadthroughを規定するのではなく、RIT自身の構造、周辺の塩基配列などによって転写がどこで終結するのかが決定されていることが示唆された。
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