研究課題
DNA修復の機構は損傷の多様性に対応して数多く存在する。中でも最も広範囲の種類のDNA損傷を修復するヌクレオチド除去修復機構に及ぼすクロマチン構造の影響を明らかにするために、ヒトの再構成修復系と精製ヒストンを用いたポジショニングしたヌクレオソーム再構成系を結びつけて、新たにクロマチン・ヌクレオチド除去修復系を確立した。またヌクレオソームーポジショニング配列を含む独自の5S dinucleosomeの構造を直視的に解析するために、原子間力顕微鏡を用いたヌクレオソームの位置解析法を確立するに至った。原子間力顕微鏡で5S dinucleosomeの構造を見ると、リンカーヒストンH1が結合するとクロマチンがコンパクトに折り畳まれて構造が変化することが確認されたが、クロマチン構造は、UV照射によるDNA損傷の形成にはほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。さらにクロマチン・ヌクレオチド除去修復系を用いて修復効率を裸のDNAとクロマチン鋳型で比較したところ、(6-4)光産物の損傷部位が、ヌクレオソームの中央にあるいはリンカーDNAのどちらに位置しても、クロマチン鋳型からの修復は裸のDNAの20%以下に著しく抑制される事が示された。しかしクロマチン構造を変化させる複合体のACFはリンカーDNAに損傷がある5S dinucleosomeからの修復を特異的活性化した。以上の結果は修復の初期にヌクレオソームのスライディングによる空間形成の段階が存在することを示唆するものである。
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