神経シナプス結合部位の細胞膜裏打ち骨格関連蛋白質 Chapsyn110の生理機能を追及するために、in vivoにおけるリン酸化状態について前年度まで追跡し、その結果からチロシンリン酸化部位の同定をこれまでに進めてきた。本年度はそのリン酸化部位について、細胞内での生理機能との関連を求めるために、リン酸化されない変異体遺伝子を構築し発現系を構築しつつある。 またこの実験とは別に、神経細胞におけるChpasyn110の新たなリガンドとして、細胞膜蛋白質であるABC (ATP-Binding Cassette)transporterについてその可能性を検討してきた。ABC transporterは細胞膜を介して生体異物や生理活性物質などを輸送するATPaseであり、多様かつ多数の遺伝子群が存在し、重要な生理機能を持つことが次々と明らかになってきている。すでにABC transporterの一種、cMOATがPDZ蛋白質であるPDZK1と結合することが示されており、PDZ蛋白質の側からも、ABC transporterの側からもそれらの機能的連関がそれぞれの生理機能の追及において重要となることが考えられいる。そこで、脳で発現している新たなABC transporterを検索し、その結果幾つかの新しい遺伝子断片のクローニングに成功した。少なくともそのうちの一つにはPDZとの結合に必要なC末アミノ酸配列が保存されており、ここを介してChapsyn110と結合している可能性が考えられる。
|