我々が単離したチロシン脱リン酸化酵素PTP-U2は、白血病細胞の分化に伴って発現の上昇を示す。これまでの研究により、長鎖型PTP-U2Lはある種の白血病細胞の分化・アポトーシス誘導を促進させることがわかってきた。今回、白血病細胞の分化・アポトーシスにおけるPTP-U2情報伝達経路を明らかにすることを目的として以下の実験を行った。 1.PTP-U2のアミノ酸配列に注目したところ、同蛋白質は白血病発症に関与するとされるキナーゼ、Pim-1のリン酸化部位と類似したモチーフを有することが明らかになった。同領域の合成ペプチドおよび細胞から抽出したPTP-U2は、Pim-1によって実際にリン酸化を受けた。PTPーU2ペプチドに対するPim-1のリン酸化反応の効率は、これまでに同定されているPim-1の基質よりも極めて高いものであった。また、試験管内結合実験により、Pim-1とPTP-U2が複合体を形成することが確認された。興味深いことに、Pim-1によってリン酸化されたPTP-U2はホスファターゼ活性を減じることが明らかになった。今後は、Pim-1リン酸化部位変異型PTP-U2遺伝子の導入実験等により、Pim-1によるPTP-U2の機能制御の生理的意義を明らかにしたい。 2.予備的検討により、PTP-U2Lは分化誘導時に発現してくる何らかの因子と協調して分化細胞のアポトーシスを誘導する可能性が示唆された。そこで、PTP-U2L結合蛋白質のツー・ハイブリッドスクリーニングを行い、幾つかの陽性クローンを単離した。今後は、細胞内におけるPTP-U2-同結合蛋白質相互作用の生理的意義の有無を検討したい。
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