我々はウシ白血病ウイルスBLVのエンハンサー配列LTRに対し、野生型Taxに比べ著しく高い転写活性化能を示す高活性型BLV Tax変異体を7種類同定した。これらの変異体はすべてアミノ酸残基240位から265位の間にミスセンス変異を有することから、この領域付近を介してTax蛋白の活性が抑制的に制御されていることが示唆された。変異を導入したLTRを用いたシス配列解析から、高活性型によるLTRの活性化には野生型Taxの標的配列のみで十分であることが明らかとなった。次に、野生型Taxでは活性化不可能なHTLV-I 21bpエンハンサーおよびc-fos遺伝子エンハンサーに対する転写活性化能を調べたところ、2つの高活性型変異体が両エンハンサーとも活性化した。これらの変異体のc-fosエンハンサー上の標的配列を特定するため、変異を導入したエンハンサーを用いて転写活性化能を調べた。HTLV-I Taxがc-fosエンハンサー上のCArGボックスを標的とするのと異なり、高活性型は主にCRE配列を介して転写を活性化することが明らかとなった。さらに各tax遺伝子導入細胞内でのc-fos mRNA量をRT-PCR法により調べたところ、非導入および野生型導入細胞に比べ高活性型導入細胞で顕著に高いc-fos mRNAの発現が認められた。これより高活性型Taxはc-fos遺伝子の発現を活性化することが示された(以上現在投稿中)。 さらに我々は、高活性型taxを有する感染性ウイルス分子クローンを構築し、Taxの活性がウイルス性状に及ぼす効果について検討した。高活性型分子クローンでは、今回調べたウイルス遺伝子の発現量、複製量、および伝搬能力すべてにおいて上昇が観察された(現在投稿中)。
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