研究概要 |
ウシ卵子を包む透明帯は3種類の糖タンパク質からなり,その糖鎖部分が精子との結合や多精拒否において重要な役割を持つと考えられる。これまでに,高マンノース型糖鎖が精子結合に関わることを見いだしているが,受精に伴い酸性N結合型糖鎖が減少することから,シアル酸と多糖拒否の関係を明らかにすることを目的として研究を進めている。1 受精に伴うシアル酸の減少 ウシ未受精卵および受精卵から透明帯を単離しシアル酸の定量を行ったところ,受精により約10%減少することがわかった。酸性N結合型糖鎖は約40%減少することから,酸性O結合型糖鎖のシアル酸はほとんど遊離しないと推測された。2 シアル酸の精子結合への関与 競合阻害法を用いて,可溶化したウシ透明帯の精子結合活性に対するシアリダーゼ処理の影響を調べたところ,この処理により精子結合活性が低下し,受精卵透明帯と同程度になった。卵子をシアリダーゼ処理し精子結合数の変化を調べたところ,シアリダーゼ処理卵への精子結合数は受精卵と同程度になった。さらに,モデル糖タンパク質のフェツインが弱いながらも精子結合活性を示したのに対して,アシアロフェツインは活性を持たなかった。以上の結果から,既にわかっている高マンノース型糖鎖に加え,シアル酸が精子結合に関わることが明らかになり,受精卵での精子結合活性の低下は主にシアル酸の減少によるものであることが示唆された。3 シアル酸の結合様式 酸性N結合型糖鎖のシアル酸の結合様式を特異性の異なるシアリダーゼを用いて推定した。その結果,60%が2-3結合であった。受精に伴い透明帯糖鎖に作用するシアリダーゼを同定する上で有用な情報であると考えられる。
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