分裂酵母SpCENP-A(Cnp1)は進化的に保存されたセントロメア特異的なヒストンH3バリアントである。ヒトホモログであるCENP-Aをはじめとして、非常に単純なセントロメアを有する出芽酵母から、染色体全域にセントロメアの広がる線虫まで、このヒストンH3バリアントは進化上共通してセントロメアに局在化することが知られている。我々は、分裂酵母SpCENP-Aをクローン化し、そのセントロメアヘの局在化に、姉妹セントロメア結合に必須なMis6タンパク質が必要であることを明らかにした。SpCENP-Aは、Mis6と同様、セントロメア中央領域に局在し、染色体の均等な分配に必須な特異的クロマチン構造形成に必要であった。SpCENP-Aの転写は細胞周期依存的で、Mis6が機能するDNA複製初期に起こることがわかった。Mis6が新規に合成されたSpCENP-Aをセントロメアヘ局在化する活性を持つことを示し、それまで謎であったMis6のGl/S期の機能が、SpCENP-Aの姉妹セントロメアへのローディングにあることを解明した。Mis6はヒトや出芽酵母にもホモログを持つタンパク質なので、Mis6を介したCENP-Aのローディングは、進化上保存されたメカニズムと期待される。 現在、コネクター分子であるMis6が、DNA複製初期に新規に合成されたセントロメア特異的ヒストンH3バリアントSpCENP-Aを、セントロメアヌクレオソームにローディングすることにより、複製後の姉妹セントロメアクロマチン間の結合に、左右の方向性(二極性)を付与し、それが次の分裂期の染色体の均等分配を保障しているというモデルを考えている。CENP-Aのローディングによる二極性の獲得は、セントロメアが持つべき最も基本的な性質で、これが全ての真核生物にセントロメア特異的ヒストンH3バリアントが保存されている理由かもしれない。
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