研究概要 |
本年度は、膜裏打ちタンパク質ZO-1および類似構造を有するZO-2,ZO-3がタイトジャンクションに局在する分子機構に関して新たな知見を得た。 過去に、膜タンパク質オクルディンとの分子間相互作用の存在により、これらの細胞質タンパク質が特定の膜領域に局在可能となっているというモデルを立てた。実際、オクルディンとZO-1,-2,-3が直接結合すること、また、各々結合に必要な領域の同定も行った。しかしながら、オクルディン分子を欠損したマウスの上皮細胞においてもZO-1,-2,-3はタイトジャンクションに存在していた。この事実はオクルディン以外にZO-1,-2,-3が結合する膜タンパク質が存在することを予測させるものであった。そこで最近当研究室で同定された、新規4回膜貫通型タンパク質クローディンとZO-1,-2,-3の結合について解析を行った。最初に、線維芽細胞L細胞にクローディン-1を外来性に発現させたC1L細胞におけるZO-1の局在を観察した。その結果、wild typeのクローディン-1を発現させたC1L細胞においては、ZO-1はクローディン-1の濃縮する細胞間接着部位に局在した。しかし、カルボキシル末端の2アミノ酸を欠失したmutantクローディン-1を発現させたC1ΔLVL細胞においてはmutant分子がwild type分子と同様に細胞間接着部位に濃縮したのに対し、ZO-1の濃縮が認められなかった。そこで、fusion proteinを用いたin vitroの結合実験を行い、ZO-1のPDZ1ドメインがクローディン-1のカルボキシル末端付近に直接結合することを明らかにした。ZO-2,ZO-3についても同様の結果が得られ、これら3分子は独立にクローディンと結合することにより、タイトジャンクションにおいて異なる膜タンパク質同士をanchorする事に働いているということを実証できた。
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