研究概要 |
低分子量GTPase,Phoは、Lysophosphatidic acid(LPA)などの細胞外シグナルの下流で主にアクチン系の細胞骨格を制御していると考えられている。私は既に、Rhoのエフェクター分子としてRho-キナーゼとMBSを同定し、Rho-キナーゼとMBSが協調してミオシンのリン酸化レベルを調節していることを報告している。本研究では、Rhoによる細胞骨格の制御機構を明らかにすることを目的とし、Rho,Rho-キナーゼ及びMBSの機能解析を行った。 本研究ではまず、Rho-キナーゼによるMBSのリン酸化を特異的に認識する抗リン酸化MBS抗体を用いて、生理的な状態でMBSのリン酸化が起こるかどうか解析を行った。その結果、細胞をHGFやTPAにより刺激することで、MBSのリン酸化が亢進すること、またこのMBSのリン酸化の亢進はRho-キナーゼの阻害剤で抑制されることを示した。さらに、免疫染色を行うことで、リン酸化MBSが細胞質分裂の分裂溝、膜ラッフリング部位、及び移動中の細胞の先端に濃縮していることを見出した。このことは、Rho-キナーゼが細胞分裂や細胞運動に関与しているという知見とよく一致する。 私はさらに、Rho-キナーゼのC末端領域がRho-キナーゼの触媒領域に直接作用し、酵素活性を抑制することを見出した。このことからC末端領域はRho-キナーゼの負の制御領域であると考えられ、Rho-キナーゼの活性制御機構を解明する手がかりになると思われる。また、Rho-キナーゼのC末端領域の阻害効果はin virto及びin vivoにおいて極めて特異的でり、種々の細胞現象におけるRho-キナーゼの役割を解析する有用なツールとなることを示した。 現在、Rho-キナーゼの新規基質蛋白質のスクリーニング、解析を行っている。既に、MAP2やTauがMBSと結合すること、及びRho-キナーゼのよい基質となることを見出し、Rho-キナーゼがアクチン系のみでなく、微小管系細胞骨格の調節にも関与することを示唆するデータを得ている。 以上、本研究の研究目標はほぼ達成できたと考えられる。
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