サイトソルの分子シャペロンhsc70は、コシャペロンとしてDnaJホモログを必要とする。現在まで哺乳類では30種類ほどのDnaJホモログが同定されているが、このうち大腸菌DnaJや酵母Ydj1と同じくJ-domain、G/F-domain、Zinc finger-domainの3つをもつ正統派タイプのDnaJはdj2(DJA1;HSDJ/hdj2/mdj2/rdj1)、dj3(DJA2;DNJ3/HIRIP4/rdj2)、ミトコンドリアに局在するDJA3、組織特異的発現がみられるDJA4の4つである。申請者はubiqitousに発現しているdj2、dj3に早くから着目し、ウサギ網状赤血球ライセートをシャペロン源として、hsc70と協調して働くコシャペロンとしての性質を生化学的に確立した。このとき、別のタイプに属するDnaJホモログdj1(DJB1;hsp40/hdj1)についても比較検討を行ない、ミトコンドリアへのタンパク質輸送とルシフェラーゼの巻き戻しのアッセイ系でdj2、dj3が必要であることを明らかにした。このとき、dj1は必要ではなかった。さらにルシフェラーゼの巻き戻しとhsc70のATPase活性におよぼす影響を、ATP/ADP交換反応を促進させる因子として同定されたbag1を含めて報告した。続いて申請者は3つのDnaJホモログとhsc70との細胞生物学的解析を行ない、hsc70とdj2、dj3は大変似た細胞内分布を示すことを明らかにした。一方、dj1は通常の培養条件下では核及びその近傍のサイトソルに存在し、hsc70と異なる細胞内分布を示したが、熱ショック下でhsc70と共に核小体に移動・集積した。以上の結果から、通常の成育条件下でhsc70のコシャペロンとして働くDnaJホモログはdj2、dj3であることが示唆された。
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