昨年までの研究で、PLK(Polo-like kinase)が、培養細胞を用いた実験系において分裂(M)期、特に微小管形成において重要な因子の一つであることを報告してきた。 他方、抗癌剤タキソールの作用機序の一つが微小管形成の阻害である。これらの事実に基づいて、膀胱癌培養細胞よりタキソール耐性株を樹立した。親株とタキソール耐性株でPLKのmRNAの発現を比較したところ、有意にタキソール耐性株でPLKmRNAの発現の増強を認めた。よってPLKmRNAの発現上昇がタキソール耐性の獲得に関与しているかを確かめるために、親株にPLKの過剰発現細胞をクローニングしてタキソールに対する感受性を比較した。その結果、親株とPLK過剰発現株の間でタキソールに対する感受性は有意な差を認めなかった。このことによりタキソール耐性株のPLKの過剰発現という現象はタキソール耐性獲得に直接的には働いていなかった。 一方、マウスの胎盤を卵巣におけるPLKの発現の局在を免疫染色法にて検討した。 細胞増殖のマーカーであるProliferating celluar unclear antigen(PCNA)の発現が強い多細胞において、PLKの発現で認めた。また、卵巣の増殖していない間質細胞や黄体にもPLKの発現を認めた。このことより、PLKは特殊な細胞においては、分裂期以外の機能をもつことが示唆された。
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