研究概要 |
これまでに我々は,出芽酵母のゴルジ体膜タンパク質Rer1pが,ゴルジ体に誤って諭送されてきたSec12p,Sec71p,Sec63pなどといった一群の小胞体膜タンパク質を認識し,ゴルジ体から形成されるCOP I小胞を介して小胞体へと送り返す新たな分子選別装置の一つであることを示唆してきた.しかしながら,これまでのところ,Rer1pとSec12pなどとの直接的な相互作用は,両者が膜タンパク質であることもあって検出することができなかった.そこで,本年度はまず,Rer1pとSec12pの直接的な相互作用をクロスリンク法によって解析した.その結果,Rer1pがSec12pの膜貫通領域を特異的に認識し,結合することがはじめて明らかとなった.また一方で,Rer1pの生体内における動態をリアルタイムで解析するために,緑色蛍光タンパク質(GFP)をN末端に結合した融合タンパク質(GFP-Rer1p)を構築した.このGFP-Rer1pはRer1pとしての活性を保持しており,細胞内において酵母のゴルジ体に見られるようなドット上の構造体に局在していた.解析の結果,GFP-Rer1pは小胞体からのタンパク質輸送に欠損を持つsec変異株では速やかに小胞体に蓄積するようになることから,Rer1p自身もゴルジ体ー小胞体間をリサイクリングしていることが示唆された.また,Rer1pのゴルジ体局在化に必要な領域を探索したところ,C末端側の細胞質領域が重要であることが判明した.さらに,ゴルジ体から小胞体,ゴルジ体層板間における小胞輸送に働くCOP I複合体(COP I)がRer1pのC末端側の細胞質領域と相互作用すること,COP Iに欠損を持つ変異株ではGFP-Rer1pが液胞へと誤って輸送されてしまうことなどから,Rer1pのゴルジ体局在化と小胞体へのリサイクリングはCOP Iによって厳密に規定されていることが明らかとなった.
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