研究概要 |
ホメオボックス遺伝子の多くは、動物の頭尾軸に沿った体の部分構造のパターン形成に関与する遺伝子である。現在、多種の動物にホメオボックス遺伝子が存在することが判明している。ホメオボックスによりコードされるホメオドメインのアミノ酸配列は、相同遺伝子間で、進化的に高度に保存されている。頭尾軸をもつ最も下等な動物である刺胞動物にも、ホメオボックス遺伝子の存在することがヒドロ虫類、花虫類で報告されている。刺胞動物のもう1つの類である鉢虫類に属するミズクラゲは、鉢ポリプの頭尾軸に沿った体幹部にくびれが複数個(7-8個)生じ(分節化)、ストロピラに変態する。そして各くびれ部分は各々エフィラに変態する(最も基部の部分は鉢ポリプとなる)。私はホメオボックス遺伝子がこの変態過程で発現しているのではと考えた。そこで本年度ではミズクラゲのホメオボックス遺伝子を同定することを目的とした。ミズクラゲポリプ個体からDNAを抽出し、ホメオボックス塩基配列特異的変性プライマーでPCR反応を行い、期待される大きさの増幅DNA断片(116bp)をベクタープラスミドに挿入し、大腸菌に感染させ、ライブラリーを得た。各プラスミドDNAを精製し、塩基配列を決定し、ホモロジー検索を行った。その結果、現在までにミズクラゲに存在する7つのホメオボックス遺伝子を発見し、DNAデータベース(DDBJ/EMBL/Genbank)に登録した。Neo Scox1(DDBJ/EMBL/GENBANK No.AB037147)、Scox9(No.AB035803),Scox3(No.AB037148),Scox2(No.AB036330),Scox6(No.AB036331),Scox7(No.AB036691),Scox8(No.AB036692)。今後は各遺伝子のCDSを明らかにし、in situハイブリダイゼーションを行う予定である。
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